玉掛け作業は、クレーンなどを使用して重量物を吊り上げる際に、安全かつ確実に行う必要がある重要な作業です。しかし、スリングの掛け方を間違えると、荷崩れや落下事故につながる危険性があります。
そこで、この記事では玉掛け作業を行う上で必須となる、玉掛け用スリングの代表的な5つの掛け方について分かりやすく解説します。
それぞれの掛け方の特徴や用途、注意点に加え、ワイヤーロープ、チェーンスリング、スリングベルトといったスリングの種類ごとの特徴や選び方も説明。安全第一で作業を進めるためにも、ぜひ最後まで読んで、理解を深めてください。
玉掛け用スリングの代表的掛け方&用途5選!
玉掛け作業におけるスリングの掛け方は、吊り荷の形状や重量、作業環境によって適切な方法を選択する必要があります。ここでは代表的な5つの掛け方を、それぞれの用途や注意点と共に解説します。
掛け方①目掛け(アイ掛け)
引用元:一般社団法人日本クレーン協会
目掛け(アイ掛け)は、スリングの両端をクレーンフックに掛け、吊り荷の吊り点(アイ)に引っ掛ける方法です。最も基本的な掛け方で、吊り荷に明確な吊り点が設けられている場合に適しています。1本づり、2本づり、3本づり、4本づりなどがあります。
メリット
- 操作が簡単
- スリングの損傷が少ない
デメリット
- 吊り点がないと使用できない
- 吊り荷が傾斜しやすい
注意点
- 吊り点の強度を確認する
- スリングと吊り点の接触部に損傷がないか確認する
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掛け方②あだ巻き掛け
引用元:一般社団法人日本クレーン協会
あだ巻き掛けは、吊り荷にスリングを巻き付け、スリングの両端をクレーンフックに掛ける方法です。吊り荷に吊り点がない場合や、形状が複雑な場合に有効です。
メリット
- 吊り点がない吊り荷にも使用できる
- 吊り荷を安定させやすい
デメリット
- スリングが摩耗しやすい
- 吊り荷の形状によっては安定しにくい場合がある
注意点
- スリングと吊り荷の接触部に鋭利な角がないか確認する
- 荷重によるスリングの滑りを防ぐ
- 適切なシャックルやパッドを使用する
掛け方③半掛け
引用元:一般社団法人日本クレーン協会
半掛けは、スリングをU字型にして吊り荷に掛け、スリングの両端をクレーンフックに掛ける方法です。吊り荷のバランスを取りやすく、比較的安定した吊り上げが可能です。
メリット
- 吊り荷のバランスが取りやすい
- 比較的安定した吊り上げが可能
デメリット
- スリングの強度が低下する(使用荷重が半分になる)
注意点
- 使用荷重の低下を考慮してスリングを選ぶ
掛け方④目通し
引用元:一般社団法人日本クレーン協会
目通しは、スリングを吊り荷の穴や隙間に通し、スリングの両端をクレーンフックに掛ける方法です。吊り荷の形状に合わせて柔軟に対応できます。
メリット
- 様々な形状の吊り荷に対応できる
デメリット
- スリングと吊り荷の接触部に摩擦が生じやすい
注意点
- スリングと吊り荷の接触部に保護材を使用する
- スリングがねじれていないか確認する
掛け方⑤くくり吊り
引用元:大洋製器工業株式会社
くくり吊りは、スリングで吊り荷を直接縛り、クレーンフックに掛ける方法です。他の掛け方が難しい場合に用いられますが、荷崩れの危険性が高いため、慎重な作業が必要です。
メリット
- 他の掛け方が難しい場合に有効
デメリット
- 荷崩れの危険性が高い
- スリングが損傷しやすい
注意点
- 確実な結び方をする
- 吊り荷の形状や重心に注意する
- 荷崩れ防止対策を施す
- 玉掛け技能講習を修了した者が作業を行う
それぞれの掛け方にはメリット・デメリットがあり、吊り荷の形状や重量、作業環境によって最適な方法を選択することが重要です。安全な玉掛け作業のためには、適切な掛け方を選択し、注意点を守って作業を行うようにしましょう。
ヨロスト。のスリングベルトはこちら玉掛け用スリングの選び方は?特徴を解説
玉掛け作業には様々な種類のスリングが存在し、それぞれ特徴が異なります。作業内容や荷物の種類、重量、形状に合わせて適切なスリングを選ぶことが安全な作業には不可欠です。ここでは代表的な3種類のスリングの特徴を解説します。
ワイヤーロープ
ワイヤーロープは、複数の細い鋼線を撚り合わせて作られたスリングです。非常に強度が高く、耐熱性、耐摩耗性にも優れているため、高温物や鋭利な角を持つ荷物の玉掛け作業に適しています。
また、比較的安価であることもメリットです。しかし、柔軟性に欠けるため、複雑な形状の荷物には適さない場合があります。さらに、素線切れや錆の発生に注意が必要です。定期的な点検と適切な保管が重要です。
メリット | デメリット |
---|---|
高強度 | 柔軟性に欠ける |
耐熱性、耐摩耗性に優れる | 複雑な形状の荷物に不適 |
比較的安価 | 素線切れ、錆の発生に注意 |
チェーンスリング
チェーンスリングは、鎖を繋げて作られたスリングです。ワイヤーロープ同様、高強度で耐熱性、耐摩耗性に優れています。ワイヤーロープよりも柔軟性があるため、多少複雑な形状の荷物にも対応できます。また、部分的な損傷の場合、損傷箇所のみの交換が可能であるため、メンテナンスコストを抑えることができます。
しかし、ワイヤーロープと比較すると重量があり、取り扱いがやや不便な場合があります。また、衝撃に弱いため、急激な荷重変化には注意が必要です。
メリット | デメリット |
---|---|
高強度 | 重量がある |
耐熱性、耐摩耗性に優れる | 衝撃に弱い |
ワイヤーロープより柔軟性がある | 取り扱いがやや不便 |
部分的な交換が可能 |
スリングベルト
スリングベルトは、ポリエステルやナイロンなどの繊維で作られたスリングです。軽量で柔軟性が高く、様々な形状の荷物に適応できます。また、荷物を傷つけにくいというメリットもあります。
ただし、ワイヤーロープやチェーンスリングと比較すると強度は劣り、耐熱性、耐摩耗性も低いため、高温物や鋭利な角を持つ荷物の玉掛けには適していません。また、紫外線や化学物質の影響を受けやすいため、保管場所や使用環境に注意が必要です。種類も豊富で、エンドレスタイプ、両端アイ形、マルチスリングなどがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
軽量で柔軟性が高い | 強度が低い |
様々な形状の荷物に適応 | 耐熱性、耐摩耗性が低い |
荷物を傷つけにくい | 紫外線や化学物質の影響を受けやすい |
玉掛けスリングを選ぶときは荷重量をチェック!
スリングを選ぶ際には、荷物の重量だけでなく、形状、作業環境、安全係数などを考慮する必要があります。安全係数は、スリングの破断荷重を実際に吊り上げる荷物の重量で割った値です。労働安全衛生規則では、玉掛け用具の安全係数は6以上と定められています。
つまり、1トンの荷物を吊り上げる場合は、破断荷重が6トン以上のスリングを使用する必要があります。適切なスリングを選定することで、安全で効率的な玉掛け作業を実現できます。不明な点があれば、玉掛け技能講習を修了した専門業者に相談することをお勧めします。
ヨロスト。のスリングベルトはこちら玉掛け作業でスリング以外で必要なものも紹介!
安全かつ確実な玉掛け作業を行うためには、スリング以外にも様々な器具や保護具が不可欠です。ここでは、スリングと組み合わせて使用する主なもの、そして作業者の安全を守るための保護具について解説します。
連結金具
スリングと荷物を繋ぐ、あるいは複数のスリングを連結するために様々な連結金具が使用されます。主な種類と特徴は以下の通りです。
種類 | 特徴 | 用途 | 注意点 |
---|---|---|---|
シャックル | U字型の金具にピンやボルトで開閉する仕組み。様々な形状・サイズがあり、汎用性が高い。 | ワイヤーロープやチェーンスリングとの連結に最適。 | ピンの脱落防止に注意。定期的な点検が必要。 |
フック | J字型またはS字型の金具。荷物を直接引っ掛ける。 | 比較的軽量な荷物の吊り上げに適している。 | フックの形状や材質に合った荷物を吊ること。過負荷に注意。 |
リング | 輪状の金具。複数のスリングを連結したり、荷重を分散させたりするのに使用。 | 複雑な吊り方をする際に有効。 | リングのサイズと荷重に注意。 |
コネクター | 安全環付きのフック。フックの口が開かないため、安全性が高い。 | 高所作業など、安全性が求められる現場で使用する。 | 開口部が小さいため、接続できるスリングの種類が限られる。 |
代表的なメーカー
国内で流通している代表的なメーカーとしては、例えば以下のようなものがあります。
- ピーエイエス
- オーエッチ工業
- キトー
吊り天秤・保護具
吊り天秤は、複数のスリングを使用して荷物を水平に吊り上げるための器具です。荷物のバランスを保ち、安定した吊り上げを可能にします。保護具は、作業者の安全を守るための必須アイテムです。主な種類と用途は以下の通りです。
種類 | 用途 | 注意点 |
---|---|---|
吊り天秤 | 長尺物や重量物の水平吊り上げ。 | 適切な吊り位置の選定とバランス調整が重要。 |
安全帯 | 高所作業時の墜落防止。フルハーネス型が推奨される。 | 定期的な点検と適切な装着が必須。 |
ヘルメット | 頭部への落下物からの保護。 | あご紐を確実に締める。 |
安全靴 | 足元への落下物からの保護。 | JIS規格適合品を選ぶ。 |
革手袋 | 手の保護。 | 作業内容に適した材質のものを選ぶ。 |
玉掛け作業は危険を伴う作業です。スリングだけでなく、適切な連結金具や保護具を使用し、安全に作業を行うようにしましょう。
作業前に必ず点検を行い、作業手順を熟知しておくことが大切です。また、玉掛け技能講習を修了した有資格者が作業を行うようにしましょう。
ヨロスト。のスリングベルトはこちら玉掛け用スリングの掛け方と用途を活用しよう
この記事では、玉掛け作業におけるスリングの代表的な掛け方5選を紹介しました。それぞれの特徴と用途、注意点を理解することで、安全かつ効率的な玉掛け作業を行うことができます。荷物の形状や重量、作業環境に合わせて適切な掛け方を選択することが重要です。
使用する道具は作業前に必ず点検を行い、損傷や劣化がないかを確認しましょう。この記事を参考に、安全な玉掛け作業を実践してください。